第6章 マイ・スイートハート ※【赤葦京治 続編】
家に辿り着き風呂を溜めると、まず汐里をそこへ促した。
毎日毎日、相も変わらず冷える。
俺の家に来たことで風邪でも引かせたら大変だ。
風呂から上がってくる汐里を待つ間、やかんを
火にかけ、インスタントの飲み物を準備。
緑茶、ココア、カフェオレ、紅茶…。
汐里が飲みそうなものはこの辺りか…?
明日もお互い仕事だから、朝はゆっくりできないけれど。
長い夜だけは、ずっと一緒だ。
「お風呂、ありがとうございました」
「あ、うん」
リビングに現れた、パジャマ姿の汐里。
頬はホワッと上気していて、芯からちゃんと温まったのだとわかる。
「あんまりマジマジ見ないで…。メイク落としちゃったから…」
俺の視線に気づいた汐里は慌てて両手で顔を覆い、指の隙間からこちらをチラ見してくる。
別に、そこに目を留めたわけじゃないんだけど…。
「あー…?何か幼くなるね」
「…っ!?そこは "すっぴんでも変わらないね" って言うところ!」
「すっぴんでも変わらないね」
「遅!」
むくれる汐里がまた可笑しい。
開き直ったのか、もう俺から顔を隠そうとはしない。
温かくなった体をそっと抱き寄せ、耳元で囁く。
「大丈夫。どっちも可愛い」
「~~!天然タラシなんだからぁ…」
「汐里にだけね」
元々赤らんでいた顔が、更に赤くなった気がする。
こんなこと、誰にでも言うもんか。
汐里への愛しさが、当然のようにそうさせてしまうのだ。
「お湯沸かしといたから、適当に好きなもの飲んで」
「わ、ありがとうございます」
よかった。機嫌を損ねたわけではなさそう。
鼻唄を歌いながらココアを手にする汐里を横目に、俺は浴室に向かった。