第6章 マイ・スイートハート ※【赤葦京治 続編】
胸の内を上手く伝えられないなら、愛しさをキスに代えよう。
そっと唇を重ね、目と目を合わせて笑う。
「開けていい?」
「はい」
ラッピングを解いた箱の中に並ぶのは、チョコレート色のパウンドケーキ。
「え、すご…。作ったの?これ。汐里が?」
「あ!何、その言い方!もっと酷いのが出てくると思いました?」
「いや、そうじゃないけど。ケーキって難しいんじゃないの?」
「実は梨央さんに教えてもらったんです、初心者でも簡単に作れるって。レシピも一緒に」
「へぇ、そうなんだ」
切り分けたケーキの厚さが少しずつ違うところは、汐里らしくて可愛い。
慣れないものを俺のために作ってくれたんだと思うと、もう嬉しいしかない。
「食べさせて?」
「え?私が?」
「うん」
一瞬驚いた顔を見せるものの、俺の言うとおり、ひと口サイズにケーキを摘む汐里。
差し出されたそれにパクリと食いついた。
「…っ、ひゃぁ…!」
汐里の指先まで一緒に含みペロリと舐めれば、途端に変な声が響く。
「指…っ!な、舐めた!!」
うん。それが?
目を丸くして、自分の指と俺の顔を見比べてる。
ほんっと、面白い。汐里の百面相は癖になる。
「美味いよ。甘さもちょうどいい」
「よかった…」
「汐里も食べる?」
「え?…はい」
俺も同じようにケーキをちぎり、口元に差し出してみる。
汐里は黙ったまま口を開き、それを咀嚼し、飲み込んだ。
「まだ残ってるよ」
トッピングの粉砂糖は、俺の指先に付いたまま。
「や、うそ…」
「嘘じゃない」
「恥ずかしい」
「俺もしたし、恥ずかしくないよ。ほら」
柔らかな唇をツンツン突くと、おずおずと開かれるそれ。
控えめに咥え、舌が這う。
恥ずかしいと言った割には、丁寧にクルリと舐め、ちゅっ、と音まで鳴らして…
ねぇ、ワザと?
「エッロ…」
「だって京治さんが…、っ」
ソコも食べてしまいたい。
官能的な唇を覆い何度も交わすキスは、さっきまでとはまた違う。
断然、甘い。
「「チョコの味がする」」
ふと重なった言葉に、二人して笑った。
少しずつ深まっていく、恋人たちの夜。
続きは、俺の家で…。