第6章 マイ・スイートハート ※【赤葦京治 続編】
*赤葦side*
二人で過ごした夜から数週間。
今までより増して汐里が愛おしくて仕方がない。
甘えてくれるのも、俺を求めてくれるのも、受け入れてくれる優しさも、全部好きで大切だ。
今夜は離れなくていい。
朝まで一緒に居られる。
別れる間際、いつも思ってしまうから。
"繋いだ手を離したくない" って。
二人きりで過ごせるこの夜は、やっぱり特別だ。
予約してあったレストランで空腹とバレンタインのムードを十分に満たし、家に向かう道中。
遠目に見えてくる、高台に位置する公園。
そこでふと思い出す。
そう言えば、以前黒尾さんが話してたっけ…。
「汐里、少し遠回りしていい?」
「え?はい…」
ハンドルを切り緩やかな坂道を登っていくと、同じ目的で停車しているのであろう車体が何台も見える。
そこから少しばかり距離をとって、ガードレールの脇に車を停めた。
「わぁ…、すごいですね…」
「うん…」
眼下に広がるのは、キャンドルが灯っているかのような夜景。
街中を歩いていたとしても気に留めない光が、この場所からだとまるで違うものに見える。
イルミネーションみたいに空間を彩る目的で作られたものではない。
それなのに現実から遠く離れた気にもなり、惹き付けられる。
闇夜の黒の中に煌々と輝く、白やオレンジ。
少しの間、二人でただそれを眺める。
「京治さん、この場所知ってたんですか?」
「前に黒尾さんが話してたんだ。ここ、夜景が綺麗に見えるらしいって」
「そうなんだ…。綺麗…」
ため息混じりに呟く汐里の顔を覗けば、夜景よりも煌めく二つの瞳がこちらを見つめた。
思わず身を乗り出し、顔を寄せて唇を重ねる。
ふっくらとしたそれは、柔らかくて甘い。
何度もキスを繰り返しながら、華奢な肩から背中を撫で、腰を抱く。
「…、っ…ぁ…」
舌を絡めた途端、甘ったるい声を漏らす汐里。
こんなキスをする時にいつも思うのは、自分の理性の脆さだ。
欲情が湧き上がるのを自覚せざるを得ないが、これ以上加速して我慢出来なくなったら困る。
いくら何でも、こんな場所でおっ始めるわけにはいかない。