第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
結局、流されるまま抱かれて、朝になってしまった。
ベッドに修一さんの姿はない。
シャワー浴びてるのかな?
裸のままの自分。
取りあえず、脱がされた服を着る。
朝ごはん…どうしよ…。
勝手にキッチン使わない方がいいかな。
私の何が悪かったんだろう…。
聞いた方が…いいよね?
考えあぐねていると、シャワーから上がった修一さんが戻ってきた。
「おはよう」
「おはよう……。あの、」
「俺せっかく有休とったしさ。出掛けない?」
修一さんは夕べとは打って変わって笑顔だ。
クローゼットを開け、服を選んでいる。
土日が仕事の私。
二人揃って休みなんて、なかなかない。
蒸し返さない方がいいかな。
「早く梨央も着替えて?」
「うん…。あ、先にシャワー浴びてくる」
持ってきたお泊まり用のバッグから、服を取り出す。
カーキのニットに、白いパンツ。
お風呂に向かうため修一さんの横をすり抜けようとした時、腕を掴まれた。
「それ、着るの?」
「え?うん」
「ふーん」
何?おかしい?
何の装飾もない、普通のニットとパンツだけど。
「変?」
不満げな修一さんの顔に向かって聞く。
「俺、カーキ好きじゃないんだよね。あと、パンツも」
夕べみたいな不機嫌な感じではないけど、愚痴るようにそう言う。
「そうなんだ…」
そう言われても…これしか持ってきてないし。
「パンツって、なんか色気を感じないし」
今までのデートだって、パンツスタイル多かったんだけど。
ずっと心の中でそんな風に思ってたんだ。
「家戻って、スカート履いてきてよ」