第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
結局修一さんは、途中までしか食事に手をつけなかった。
残された料理を見て、情けない気分になる。
自分の作ったものが、気に入ってもらえなかった……。
何とか空気を変えたくて、恐る恐る声をかける。
「お風呂、入れようか…?」
「…」
何も言わない。
「入る…よね?」
「…」
視線はテレビに向いたまま、無視。
堪らずキッチンに籠る。
なんでこんなことになってるの?
泊まるつもりで用意してきたけど、もう帰ろうかな…。
でも、後片付けしなくちゃ……。
キッチン、触っていいのかな。
余計に…怒らせない…?
どうしたらいいかわからなくて、しばらく一人で考える。
すると、修一さんが背後からやってきた。
後ろから抱き締められる。
「ね…こっち来て」
「え?あの、片付け…」
「いいから」
寝室へ連れて行かれる。
ベッドへ寝かされて…。
「…んんぅ…」
いきなりキス。
しかも、深い方の。
機嫌……直ったの?
舌を絡めながら、私の服を器用に脱がせていく。
下着だけになった私に、小さく「好きだよ」と呟いて、また先を進める。
戸惑いしかない。
さっきまでのは何だったの?
何事もなかったように抱いてるのは何故?
全然、気持ち良くない……。