第6章 マイ・スイートハート ※【赤葦京治 続編】
「温まった?」
「はい…」
お風呂から出てきた私に気づき、赤葦さんがソファから立ち上がる。
「じゃあ、俺も入ってくるね」
思わず服の袖を掴んだ。
「…すぐ戻るよ」
「ん…」
やっぱり、変。
ほんの少しの間、離れるだけ。
お風呂から上がるのを待つだけなのに。
無性に寂しい…。
「赤葦さん、ギュッてして?」
私を見下ろしていた顔は一瞬キョトンとした表情に変わり、そしてすぐに綻んだ。
「いいよ。はい、ギュッ」
力強く抱き締められる。
ああ…やっぱり、ホッとする。
「意外と甘えんぼなんだね、汐里は」
「…ごめんなさい」
「何で謝るの?可愛い…」
私の髪に顔を寄せ、そこに押し当てられる唇。
赤葦さんの体温を上半身に纏い、こぼれてくる台詞に気恥ずかしさを覚えながら、その温もりに浸る。
しばしの間抱き合ったあと、ゆっくりと私の体は離された。
「シャワー、浴びてくる」
その足が向かう先は、バスルーム。
「赤葦さん…」
また引き留めてしまう。広い背中に抱きついて。
やっぱり寂しいし、ジッと待ってる間に緊張でどうにかなりそうで…。
「そのままで大丈夫」
「でも俺、たぶん汗掻いてる…」
「掻いてません」
「え、俺の汗事情、わかるの?」
フッと可笑しそうに声を漏らし、眉を下げて笑う。
その顔を見たら、私の心にもほんの少しだけ余裕が生まれた。
「汗なんて気にならないし、赤葦さんはきっといい匂いします」
「その言い方、プレッシャーになるからやめてくれる?
…でも。汐里がそういうなら、我慢しなくていい?」
「うん…、今がいい…」
手を繋ぎ、二人でベッドの端に座る。
肩を抱かれて、今度はゆっくりとしたキスを。
そっと唇を触れ合わせ、お互いの呼吸を確かめるみたいに、少しずつ少しずつ…。
まだ数えるくらいしか唇を重ねていないけど。
私は、赤葦さんのキスが好き。
頭の後ろに手を添えて、髪を撫でながら少し焦らすように唇を啄み、段々深いキスに変えていく。
私を抱き締める腕に力が入ってくるのも、いい場所を探し当てるみたいに体を撫で回す手つきも。
全部全部、好き…。