第6章 マイ・スイートハート ※【赤葦京治 続編】
「!!」
尻餅を覚悟したその時、私のウエストはしっかりとした何かに支えられる。
見上げてみると、赤葦さんが手すりに手を掛けつつ体を引き寄せてくれていた。
わ、手、長いんですね。
…って、そうじゃなくて。
「あ、りがと…ございます」
「いいえ。でも汐里が踏ん張ってくれないと、どっちみち転ぶよ、コレ」
そう言われても…!
自分で自分の体を上手く扱うことができない。
そうだ、勢いをつければ、腕の力だけで何とか起き上がることができるんじゃ…?
「ちょっとやってみますね!」
「え?」
「せーのっ!」
おっ!上手くいった!?
手すりを使って何とか起き上がったはいいけれど、その体勢を保てるかと言ったらそうではなく…
「ひゃあっ…!!」
「…っ!?」
今度は目の前にいる赤葦さんに体当たりする形になり、結局二人して転んでしまった。
「……」
「……」
「随分大胆だね、汐里」
「ちがっ、これはわざとじゃなくて…!」
真下にいるのは、尻餅をついた体勢でこちらを見上げる赤葦さん。
私の体は倒れ込んだ勢いのまま、彼に跨がった状態だ。
「すぐ降りますからっ!」
でも立ち上がろうにも上手く立てないし…
どうすればいいの!?
「どうしよぉ…、これ…!」
「立たなくても横にズレたらいいよ。待って、俺がもう少し起きるから」
「はい…」
周りの視線も気になるし、赤葦さんに馬乗りになってるのも恥ずかしいし…。
もう、氷の下に沈みたい…
ペンギンになりたい…
「ヘイヘイヘーイ!さっきから見てれば何なの、お前ら!?」
二人してモゾモゾ動いている背後、氷上を滑る音と共に聞き慣れた大きな声が…。
振り返った先には、周りより飛び抜けて背の高い男の人が二人立っていた。
ニヤニヤと私たちを見下ろしてくる、お馴染みの悪ノリコンビ。
「光太郎さん!?テツさんも…」
「公衆の面前でヤラシ~イ、赤葦クン」
「いや、むしろ俺が押し倒されてるんスけど」
「その言い方止めてください!」