第6章 マイ・スイートハート ※【赤葦京治 続編】
期待と緊張の中迎えた、約束の休日。
今日は冬のデートっぽくスケートリンクを訪れた。
こういう場所は学生の頃以来。
いかにも大人同士が行く落ち着いた場所も素敵だけど、赤葦さんとは色んなところへ行きたいし、色んなこともしてみたい。
しかも都内で楽しめるからスキーやスノボより出掛けやすいということで、この複合型アミューズメント施設に落ち着いた。
雰囲気はとてもいい。
広いリンクに、ドーム型の高い天井。
屋内は少しだけライトダウンされていて、氷面に光のアートが絶えず照らし出されるのだ。
子どもや学生が多いのかと思いきや、大人同士のカップルもチラホラ目につく。
「スケートなんて何年ぶりかな」
「私もです。滑れるかな…。あとこの中、やっぱり寒いですね」
ニット帽にマフラー、手袋。ボトムスの下にはタイツ。
防寒はバッチリしてきたけれど、それでも施設内は寒い。
これで転んで尻餅なんてついたらもっと冷たいんだろうな。
お互いレンタルのスケート靴を履いたところで、いざ滑ろうとリンクまで歩く。
「カッコつけて手を差し出したいところなんだけどさ」
そこへ踏み出す間際、赤葦さんが振り返る。
「え?」
「俺が転んだらヤバイことになるから、とりあえず止めとくね」
転ぶ赤葦さん…。
すってんころりん葦さん…。
想像したら可愛い…かなりレアだ。
「思う存分転んでください」
「…やっぱ道連れにしようかな」
「怖っ!あ、こうしません?先に転んだ方が、あとでラーメン奢る」
「いいね、乗った」
ゆっくり氷の上にスケート靴を滑らせる赤葦さんは…
「…すげぇ変な感じ」
やっぱり転ばないよね、さすがスポーツマン。
取り合えず立った状態で私を待っていてくれる。
私はと言えば、手すりに手を掛け恐る恐る足を乗せてみる。
「こ…、怖い…。既に転ぶ気しかしない…!」
「ガンバレー」
「酷い棒読み!」
私の姿を眺めるその瞳は、明らかに面白がっていることがわかる。
Sっ気を覗かせたイジワルな赤葦さんを横目に、怖々両足を乗せた。
途端…
「きゃあぁあ…っ!」
案の定体勢を崩し、私の体は後方に倒れていくしかなくなる。