第5章 glass heart【赤葦京治】
園内で一際輝いている大きなシンボル。
パレードが終わったあと、今日の最後にと観覧車に乗り込んだ。
空中から見下ろすイルミネーションと、この時期にだけ飾られるクリスマスツリー。
とても綺麗で、夜空と重なると幻想的にも感じられる。
向かいの席では赤葦さんも同じように、園内に散りばめられた光を眺めていた。
こうして赤葦さんと恋人同士になれたことはやっぱりまだ夢みたい。
そういえば、彼と出会ってもう三年も経つんだな。
光太郎さんと、それからツッキーとも。
全てはテツさんに頼まれた合コンが始まりだった。
ってことは、テツさんがキューピットみたいなもの?
あの人相でキューピットとか…!
「何ニヤニヤしてるの?」
訝しげな赤葦さんの声にハッとして、私は慌てる。
「違います!変なことなんて考えてませんからっ!」
「へぇ?そう?」
「ほんとに!初めて会った合コンのこと、思い出してたんです」
「ああ、今くらいの季節だったっけ」
「そう。頻繁に光太郎さんちで集まってましたよね。忘年会だとか、新年会だとか言って。女は私一人だったから、バレンタインの時なんて…、」
思わず言葉を滑らせそうになり、口を噤んだ。
赤葦さんは知らない。
あの時作った、チョコレートのこと。
そっと赤葦さんを窺ってみる。
その瞳は、真っ直ぐ私に向けられていた。
「汐里はさ、いつから俺のこと、好きでいてくれたの?」
「え?」
改めてそんなことを聞かれると恥ずかしいけど…。
考えてみたら、今、私には嘘をつく理由はない。
「遥さんと付き合ってるって知った時、実感しました。本当はバレンタインのチョコも渡したかったけど…」
「…そっか」
全て言わなくても、わかってくれる赤葦さん。
でも過去のことだし、今はこうして一緒にいてくれる。
だからそんな申し訳なさそうな顔、しないで欲しい。
「あ、今思えば、なんですけど」
「え?」
「あの合コンのあと、また赤葦さんに会えたらいいなって、そう思ったんです。だから、実はその時から?
…これって、一目惚れってこと?」