第5章 glass heart【赤葦京治】
「わぁ!素敵!すっかりクリスマスですね!」
「ほんとだね」
寒さが増し、そろそろ初雪も降る頃かと噂される12月の半ば。
街中がイルミネーションやクリスマスソングで溢れかえるのはもちろんだけれど、この場所は更にきらびやかだ。
緑、赤、金色がふんだんに使われたオブジェと、色鮮やかな電飾。
サンタクロースのコスチュームに扮した、キャラクターたち。
ひとたびこの場所に立ち入っただけで、クリスマスムード一色のこの世界観に気分が上がる。
更に幸せなのは、私の隣に大好きな人がいてくれるということ。
私と赤葦さんは、数ヵ月ぶりにこの場所へやって来た。
以前は光太郎さんと三人で訪れた、遊園地。
今日は二人きりでクリスマスデートだ。
「どこから回る?」
「うーん…そうだなぁ…」
定番のジェットコースターも乗りたいけど、クリスマスのイベントもやっているから見に行きたい。
入り口で貰ったパンフレットに目を落としていると、赤葦さんが何か思い付いたように声を漏らした。
「あー、そうだ」
「え?何?見たいとこありました?」
「お化け屋敷入る?」
「……」
少し悪戯っぽく目を細めるその顔は、なかなかのSっぷりだ。
「酷い!怖がってたの知ってるクセに!」
付き合い始める前から薄々感じていたけど、赤葦さんはちょっとイジワルな一面もあるのだ。
でも、お化け屋敷は笑えない!
私が必死に抗議すると、そっと手を繋がれる。
「だって、あの時の汐里、可愛かったから」
「……」
ふぁぁぁああぁっ!?
「何か奇声出たけど。大丈夫?」
やだ、私ってば!
心の中で叫んだつもりが、声に出してしまっていたみたい。
大丈夫じゃないよ!
そんな顔して、そんな囁くみたいに、そんなこと言われたら…
「赤葦さんがチャラいこと言うからだもん…」
「うん。俺、結構チャラいみたい」
そう言って微かに笑う顔が、また素敵。
ああ…赤葦さんなら、チャラくても好き…。
そんなことまで考えてしまう私は、この先もっともっと赤葦さんの手中に落ちていく気がしてならない。