第5章 glass heart【赤葦京治】
これがあなたに改めて伝えたい気持ち。
傷つきながらも、私のことを好きで居続けてくれた。
見守ってくれて、叱ってくれて、励ましてくれた。
恋とは違うけれど、確かに私にとっては大事な人。
それが、月島蛍という男の人。
「好き "だった" 。もう過去のことだから」
「うん…」
泣くのを堪え蛍くんを見上げてみる。
視線が交われば、何だか困ったように小さく笑った。
「だから、変な顔しない」
「うん…」
「汐里はさ、笑ってた方が割といいよ」
「…割と?」
微妙な言い草が彼らしい。
思わず吹き出すと、私を抱き締めていた腕が離れていく。
「赤葦さんに愛想尽かされないように頑張んなよ」
「うん…」
「じゃあ、またね」
最後にそう言った蛍くん。
"またね"―――。
私が待っていた言葉だ。
「うん…、うん!またね、蛍くん!」
無理なんかしなくても、自然とこぼれる笑顔。
蛍くんも同じように笑ってくれる。
小さく手を上げて、もう私の方は振り返ることなく…
蛍くんは、この場所を去っていった。