第5章 glass heart【赤葦京治】
適当に答えながら二人でお菓子を摘む中、次にリビングに入ってきたのはお母さん。
「あ、母さん。姉ちゃん彼氏できたらしいよ!」
うちの家族、こういう情報の共有だけは抜かりない。
元々母は恋バナ大好きだから、前のめりで首を突っ込んでくる。
「えっ、そうなの?どんな人?」
「どんなって、………赤葦さん、だよ」
「ほんとに!?お母さんね、赤葦さん素敵な人だなーって思ってたのよ!」
「何、母さん知ってんの?イケメン?」
「イケメン!背が高くてシュッとしてて。あの人に似てるわよね?韓流スターの、名前何だっけ…」
"シュッとしてる" という言葉のチョイスと韓流スターでの例えは、もはやオバチャンあるあるだ。
「この前いい雰囲気だったもんねぇ?」
俳優の名前を思い出すことを諦めた母は、海斗と同じようにニヤニヤ私の顔を覗き込んでくる。
「この前…?」
「そう、病院で。頭ナデナデされてたでしょ?お母さん、見ちゃった」
「えー!何それ!病院でイチャつくなよ~!」
もうやだ…!
こういうノリは恥ずかしくて得意じゃないっ!
私はお父さん似なんだわ…。
「コンビニ行こ…」
勝手に盛り上がる二人を横目に立ち上がる。
「今度家に連れてきなさいよ」
「あ、ついでにチョコ買ってきて~」
「はいはい」
居心地悪い我が家のリビングから、寒空の下へ。
私は逃げるように、そそくさと玄関を抜け出した。
付き合いたてで実家に連れてくるなんて、きっと重い。
それにあの感じでグイグイ来られたら、赤葦さん引いちゃうかも。
海斗なんてデリカシーのない質問とか平気でしそうだし…!想像しただけでヒヤヒヤする!
うん、家族に会わせるのは当分やめておこう。