第5章 glass heart【赤葦京治】

「酷い…」



ポツリと呟いた汐里に、ギョッとする。


「…ごめ、」


「一世一代の告白だったのに言わせてくれないなんて。赤葦さん、酷い…」


唇を尖らせ、そんなことを言う汐里。
きっと、本気で酷いなんて思ってない。
顔を赤く染めて、恥ずかしそうに指先を唇に当てている。






もう…、何だよ…




めちゃくちゃ可愛い…。









「じゃあ、聞かせて？一世一代の告白。今度はちゃんと聞くから」


「えっ？そんな、改めて言われると…」


「嫌？」


「嫌じゃなくって…、緊張しちゃう…」


「だったら、これでどう？」



汐里の体を腕で包み、抱き締める。
甘い香りを吸い込んで、柔らかな髪にもキスを。
ピクッと肩が揺れるのを見たあと、ゆっくりとそれを待つ。





「…っ、赤葦、さん…」


「うん」


「……好き」


「……」


「好き、です…」




好きな子から告げられる "好き" ってのは、これ程威力のある言葉だっただろうか…？





こんなこと、滅多にないんだけど…



顔が、熱い…。





顔色の変化を悟られないうちに、もう一度汐里の体を抱き直す。



「俺も、好き」



「赤葦さん、だいすき…」



「うん。大好きだよ、汐里」



小さな手が、俺の背中に触れた。



再び唇を寄せてみれば、今度は瞼を閉じてくれる。


ひとつ、触れ合うだけのキスを。


それだけでは満足できず、何度も繰り返し唇を押し当て、愛しさの分だけ重ね合わせる。


「…ぁ、っ、ん…」


二人の唇の隙間から漏れる、汐里の声。
俺の背中にしがみつくように回される腕。
汐里の全てが可愛くて、愛おしい。






ああ…離したくないな…。












「…っ、あか、…し、さん」


「ん？」


唇を浮かせ、汐里の顔を覗いてみる。



「この場所…、落ち着かない…」



「……」



「誰か、通るかも…」









夢中なの、俺だけ…？




何かちょっと寂しいんだけど。