第5章 glass heart【赤葦京治】
*夢主side*
赤葦さんが出ていったリビングのドアに、ジッと目を向けた。
さっき…、手…
あれ、何……?
顔が熱い。
絶対、顔赤くなってる…。
もう…、どういうつもりなの…?
既にここにはいない想い人に、心で悪態をつく。
赤葦さんに触れられていた左手を、右手で包んでみる。
大きくて、温かかった。
その名残は確かにここにあって、胸がキュウッと鳴る。
「行ってきたら?」
「え?」
顔を上げたところには、こちらを見つめるツッキー。
お手洗いなのか光太郎さんは席を立っている。
「その感じ、まだ話せてないんでしょ?」
「…うん」
「僕に大見得切ったの、覚えてる?」
「…もちろん」
正直言って、この前病院で会った時も、今日も。
普段どおりのツッキーでいてくれて、救われてる。
私の気持ちを伝えても、こんな風に変わらずにいてくれること。
ツッキーのその優しさに、感謝せずにはいられない。
その上、今、私…
背中押されてるんだよね?
「ありがとう。行ってくるね!」
コートを手にして、足早にリビングを出る。
「おわっ、汐里?どうした?」
「私もコンビニ行ってきます!」
光太郎さんとすれ違い様早口でそう返し、玄関を飛び出した。
コートに袖を通しながら、エレベーターを待つ。
1階から出発したそれは、2…3…4…とゆっくり点滅の場所を変えていく。
何とももどかしい。
沢山考えたんだ、私。
赤葦さんのことも、ツッキーのことも。
弱ってグラグラしてる心に惑わされないように、ちゃんと一人になって、いっぱいいっぱい考えた。
考えた末にわかった、ツッキーへの気持ち…