第5章 glass heart【赤葦京治】
黒尾さんと別れた俺たち。
いつもならこの流れで二件目、もしくはカラオケだが、まあここは木兎さん次第ってことで。
ファミレスから駅方面へと歩き出したところで、スマホをチェックしていた木兎さんが突然足を止めた。
「あれ?ツッキーから折り返しあったわ!ちょい待ってて、電話する!」
スマホを操作し、月島と何やら話をし始める木兎さん。
会話の内容からして、これから月島も合流するらしい。
気まずくない…とは言えない。
「よーっしゃ!俺んち行こ!ツッキーも来るって!」
電話を終えた木兎さんは、何も事情を知らないだけに一人テンションが高い。
俺たちは木兎さんのマンションに向かうため、タクシーに乗り込んだ。
もはや溜り場とでも言うべき、木兎さんの家。
冷蔵庫の中から適当に酒とつまみを取り出し、三人で飲み始める。
話題は最近の木兎さんの近況とバレーチームのこと。
そして、最近何やらいい感じの女の子がいる、という色めいた話。
楽しそうにその子のことを語る木兎さんを見ていると、微笑ましいような、ほんのちょっと羨ましいような。
丁度ひとしきり喋り終えたタイミングで、部屋の中にインターホンの音が響き渡った。
「おっ、ツッキーだ!」
バタバタ玄関へ向かう木兎さんを見送りつつ、気持ちを落ち着かせるように目の前のアルコールを口にする。
「ツッキー来たぜ~!」
「オツカレサマでーす」
いつもどおりのテンションの月島が、コンビニの袋を片手にリビングに入ってきた。
「「お疲れ」」
図らずも重なった、俺と汐里の声。
隣に座る汐里と目が合うが、すぐに逸らされてしまう。
さして気にしていない様子の月島は、俺たちの正面に腰を下ろした。
月島も交え、先程の木兎さんの話がもう一度繰り広げられる。
高校生の頃からの付き合いだから月島も慣れたもので、相槌の打ち方もスルーの仕方も絶妙だ。
早々にビール一缶空にした月島は席を立ち、冷蔵庫から二本目のアルコールを持って戻ってきた。