第5章 glass heart【赤葦京治】
月島の気持ちはわかった。こっちが戸惑うほどに。
心に焦りが湧き上がる。
いつから汐里のことを好きなんだろう。
きっと、俺が彼女を意識するよりずっと前からだろうな…。
友情か恋愛感情かも曖昧なうちから、月島は汐里のことを見続けていたのかもしれない。
でも…
月島が、俺の知らない汐里を知っていたとしても。
どれだけ汐里を好きでも。
今、汐里を思う気持ちは、俺だって同じだ。
遠慮なんてするつもりはない。
「俺も、汐里が好きだから。
俺から汐里を振るなんてこと、絶対にないよ」
見据えたままの月島の瞳が、ほんの少し大きくなった気がする。
「だけど、元カノとの間で揺れてる、なんて思われてるんだとしたら…。問題だよな」
遥のこと、ちゃんと誤解を解いて、汐里に想いを伝えたい。
気持ちが揺れる要素なんて、俺の中にはひとつもないのだから。
「そうですね…」
小さく返す声からは、汐里を傷つけまいとする月島の想いが読み取れた。
「赤葦さんが汐里の気持ちに気づいてなかった、なんてこと、ないでしょう?まあ、だから言いますけど…。汐里、赤葦さんの元カノにはかなり気を遣ってたと思います。
せっかく作ったバレンタインのチョコ、赤葦さんに渡せなかったこと、あるんですよ」
「……いつ?」
「赤葦さんと彼女が、付き合い始めた年」
正直、これは予想外だった。
あの頃、汐里の態度が急によそよそしく感じたことがあったのは確かだ。
あれはやっぱり、そういうことだったんだ…。
汐里はどんな気持ちで俺を見ていてくれたのだろう。
あの頃の汐里の笑顔を思い出すと、胸が痛くなる。
同時に、その事実を知っていた月島。
俺の中に、また嫉妬心が充満する。
「僕、先手打たせてもらいましたから」
「え?」
「全部伝えました。汐里に」