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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



さっきからずっと心臓が嫌な音を立てたままだ。
どうか大事に至っていないように。
そう祈ることしかできない。
タクシーに乗ってからも、肩にもたれかかる汐里を安心させるように、俺は小さな手を握り続けた。









駅から一番近くにある、総合病院。
汐里のかかりつけの病院らしく話はスムーズだった。
待ち時間こそあったものの、汐里は診察室に入る。

落ち着かない…。
こんな緊張感はいつ以来だ…?

何度もため息をつく。
待合室のソファに座っていることすらもどかしい。
何か温かいものでも飲もうと立ち上がり、自販機へ向かう。

つい先日、歩くのもままならない遥を目の当たりにした時。
あの時の俺は、頭も感情ももっと冷静でいられたはず。


それなのに、今は…


随分ぼんやりと歩いていた。
そのせいで、そばの部屋から出てきた白衣の男性とぶつかりそうになる。


「スミマセン」


「いえ、こちらこそ」


無気力な口調と平均をかなり上回る長身。
整った造形をした顔。


誰なのかは、すぐにわかった。


「月島…」


「赤葦さん?」


目の前にいたのは、月島。
月島が臨床検査技師をしていることは知っていたが、勤務先の病院名までは俺の記憶になかった。

「ここ、月島が働いてる病院だったんだ」

「はい…。どうしたんですか?」

「汐里が気分悪くなっちゃって連れてきたんだよ。今、診察中」

「汐里が…?」

目の前の眉間が微かに歪む。

「まだ仕事?」

「いえ、もう上がるところで…」

そう言いかけた月島の視線が、俺の頭上を越えていく。
見つめる先には、車椅子に乗せられた汐里がいた。
一緒にいる看護師がこちらに向かって声を掛ける。

「付き添いの方ですか?今から点滴しますので、処置室にご案内しますね」

汐里はと言えば、気分が優れないのは変わらないようで、手のひらで目元を押さえている。

「連れて行くだけでいいなら、僕行きますよ。知り合いなんで」

「そうだったの。じゃあこれ、向こうの看護師に渡してくれる?」

「わかりました」

月島はその看護師と短く仕事のやり取りをすると、車椅子に手を掛けた。


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