第5章 glass heart【赤葦京治】
時間にして10分程度。約束の場所に到着した。
汐里の職場がここからどのくらいの距離にあるのかは知らない。
もう、着いてるか?
辺りを見回してみる。
汐里らしき人影は見当たらないものの、俺の視線はある一点で留まった。
数人の人だかりと、その足元でうずくまる小さな影。
服装から見て女性だということはわかった。
顔は見えない。体型だってはっきりとは窺えない。
でも、これは直感的なもの。
嫌な予感がして、迷うことなく駆け出した。
近づくほどに確信する。
あれが、汐里なのだと。
「すいません…っ、」
取り囲む人たちを掻き分け、そこに割って入る。
「汐里っ、どうした!?」
俺の声に気づいた汐里は、僅かに顔を上げた。
「…あ、かあしさん…。だいじょぶ、ちょっと、目まいがしただけ…」
どう見ても大丈夫だとは思えない。
口調は弱々しいし、顔色も悪い。
体を支えられないのか、グッタリと建物の外壁に背中を預けている。
ずっと引っ掛かったまま、聞けずにいた。
まだそこまで踏み込んでいい距離感だとも思っていなかった。
以前、汐里の家に行ったとき。
汐里のお母さんの口から、確かに聞いた。
『汐里、あんな体で心配かもしれないけど、定期的に病院で検査もしてるから。安心してね』
汐里には持病がある。
詳しくわからないだけに、簡単に "大丈夫" だなんて思えない。
「病院に行こう」
「大丈夫です、少し休めば…」
「ダメだよ。汐里、どこか悪いんだろ?」
「え…」
「ごめん、前にお母さんから聞いた。何かあってからじゃ遅い。行くよ」
俺たちが話している間に、誰かがタクシーを呼んでくれていたらしい。
周りにお礼を言って、汐里を抱き上げる。
「もたれてていいからね」
「…はい」
瞼を閉じ、眉間に皺を寄せたまま汐里は俺の肩に頭を預けた。