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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



「仕事の後でも良ければ、いつでも会えるよ」

『そうですか。じゃあ…』

言いかけた汐里の言葉を遮るように、店の扉から団体客が出てくる。
賑やかなその声を避けるよう、もう少し静かな場所まで移動する。

「…ごめん。いつなら良かった?」

『…今、外ですか?』

「うん。前に木兎さんと三人で飲んだバーにいる」

『そう、ですか…。私、今仕事終わったところで…』

「え…」

汐里の職場は、確かこの近くだったはず。
そばに…汐里がいるということ。
会おうと思えば、今夜、今すぐにでも会えるということだ。



「これから、会えない?」



気持ちが逸る。
こんなにも焦りや戸惑いを抱えた片想いがあっただろうか?

これまでの恋愛。
好意を持った女性からは、幸運にも同じように好意を返してもらえたことの方が多い。
付き合うまでに、さほど苦労した記憶もない。


それが、今はどうだ。


気持ちが行き違ってしまったのではないかという不安が拭えない。


それでも、会いたいという感情が止められない。


『これから、ですか?大丈夫ですけど…』


「じゃあ、駅の南口に待ち合わせでどう?」


『わかりました。それじゃ、またあとで…』


通話をオフにし、ひとつ大きく息を吐き再び店内へ。


木兎さんと会っている最中、私用でその場から帰ったことはない。


けど、今夜だけは…


「すみません木兎さん。急用ができたんで、お先に失礼します」


「あ?えっ?」


鞄とスーツの上着を手早く手に取り、約束どおりテーブルに一万円札を乗せ、もう一度頭を下げる。


「埋め合わせは、また今度しますので」


「お、おう…」


俺の言動から、気持ちが急いているのが伝わったのかもしれない。
簡単に返事をしただけで、木兎さんはすんなりと俺を送り出してくれた。




さっき電話をしている時も、冷えた空気が頬を撫でていた気がする。
改めて歩き出した屋外は、冬の訪れがすぐそこなのだと実感できる寒さだ。
肩を竦めながら、一歩踏み出すたび決意を固める。





今夜、今から。
ちゃんと言うよ。



"君が好きだ" って―――。





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