第5章 glass heart【赤葦京治】
「何?どーゆーこと!?汐里と何かあった!?」
嬉しそうに、楽しそうに、テーブルへ身を乗り出す木兎さん。
何かあったかと聞かれたら。
あの頃から徐々に、でも確実に、俺の中で大きな変化があった。
「そうですね…、まあ…」
「ナニナニナニナニっ!?」
何となく言葉を濁すものの、食い気味に返される。
俺の心の内とは裏腹に、木兎さんはむしろハイテンションだ。
大丈夫か…?
若干の不安を抱えつつ、上手く交わすべきか、話を切り出すべきかと思案した時だった。
俺のスマホの着信音が響く。
「すみません」
木兎さんに断り、仕事用の鞄に入ったままのそれを取り出した。
「…っ!ちょっと失礼します!」
ディスプレイに表示されていたのは、待ちわびた彼女の名前。
騒がしい店内を抜け、出入口の扉を潜りながら電話に出る。
「もしもし」
『あ、汐里です。こんばんは』
「こんばんは」
『今、いいですか?』
「うん」
久しぶりに聞く、汐里の声。
その声色はいつもより落ち着いている。
僅かに速くなる鼓動。
電話越しに届く声が、これから何を語るのか。
『私から連絡するって言ったのに、遅くなってすみません』
「いや、大丈夫だよ。元気だった?」
『まあまあ、です。赤葦さんは?』
「うん。まあまあ、かな」
咄嗟に取り繕った。元気だったということはない。
もう、俺とは会いたくないのかもしれない。
幻滅されたのかもしれない。
それだけならまだいい。
汐里を…傷つけてしまったかもしれない。
連絡がとれない間、そんなことばかり考えていた。
でもこうして声を聞いてしまうと、勝手な感情が湧き上がるもので…
無性に会いたい。
今すぐにでも。
『あの、近いうち会えませんか?お話したいことがあるんです』
話したいこと…。
それなら、俺にだって。
受け入れて貰えるかはわからないけれど。
伝えたい想いなら、会えない時間に抱えきれない程膨れ上がってしまった。