第5章 glass heart【赤葦京治】
跳ねるように、みきの元へ帰ってく光太郎さん。
その背中が可愛くて自然と笑みがこぼれる。
「ふふっ、友達かぁ…」
「びっくりしたよね。でも、すごくいい人だから」
光太郎さんをフォローするように、赤葦さんが言う。
穏やかなその口ぶりと光太郎さんを眺めながら微かに緩む口元が、あの人への親愛を現しているように見えた。
「楽しくて好きですよ、光太郎さんみたいな人。友達って言ってもらえて嬉しい」
本当にそう思ったんだけど、赤葦さんは少し驚いたように目を見開いて、また表情を和らげた。
それからは合コンではお約束の席替えとかして。
今度は月島くんとテツさんに挟まれる。
「月島くん、さっき席立った時思ったんだけど。すっごく大きいね!スタイルいいし」
「…どーも」
「……」
月島くんとはあんまり話が弾まない…。
ていうか、ちょっと怖い。
苦手なタイプかも…。
ソフトドリンクをちびちび飲んでる横からテツさんがコソッと教えてくれる。
「わりぃ。愛想ないけど、ツッキー俺たちにもあんな感じだから」
「そうなんだ」
「騙して連れてきたから、ちょっと怒ってんのかもだけど」
「騙す?」
「合コンって知ったら絶対来てくんねぇから。いつものメンバーで飲むとだけ言って連れてきた」
「なるほど…」
こういう場所が嫌いなワケだ。
なんか妙に納得。
「ねぇ、光太郎くん。ドライブするなら私お弁当作ってくね!」
「え、マジで!?すっげー楽しみ!!」
光太郎さんとみきは完全に二人の世界だな…。
楽しそうでよかった。
「あ、お弁当と言えばさ。汐里やらかしたことあるよね?」
「ちょっ…、みき!」
いたずらっぽく笑うみきを止めようとするけど、場の空気がそれを許してくれない。
「やらかしたって!?ナニナニ!?」
前のめりになる光太郎さん。
「デートで彼氏に作ったお弁当が、焼肉弁当だったの!おかずもゴボウのきんぴらで。全体的に茶色くて、おばちゃんのお弁当かって引かれたらしいよ!」
「し…しょうがないでしょ!弟のお弁当にお肉入れると喜ぶから!つい同じ感覚で作っちゃったの!」
確かにあの彼には、もっと彩り豊かな女の子らしいお弁当を期待されていたみたいだけど…。