第5章 glass heart【赤葦京治】
ディスプレイをタップし、着信の主を確認してすぐ。
思わず笑みがこぼれた。
そう言えば最近会ってない。
何か急な用事かな?
着信履歴から電話をかけ、何度目かのコール音で応答がある。
「もしもし、テツさん?こんばんは。電話すみませんでした」
『いや。LINEでもよかったんだけどさ、頼みが頼みだけに』
電話の向こうの主は、黒尾鉄朗センパイ。
大学の時からの付き合い。
学生時代は何かと可愛がってくれて、でもお互いに恋愛感情なんてものは皆無で。
気を遣わずに付き合えて、楽しくて、それでいて頼りになる人…それがテツさん。
テツさんからの連絡は、急ぎでもない限りLINEがほとんどなんだけど。
「頼み?合コンですか?」
『察しがいいねぇ。さすが汐里』
「いいですよ。人数は?」
『4対4。今月中に何とかなんね?』
「たぶん大丈夫。ちなみにそっちはどんなメンバーですか?」
相手の情報なしじゃ友達にも声かけられないし、一応確認する。
『一人は俺とタメでプロのバレー選手。もう一人はひとつ下で美術館の学芸員。あとの一人は汐里と同い年。総合病院で検査技師してる』
「バレー選手!?凄っ!みんな食いつくだろうな」
『食いついてくれ。そいつが合コンしてくれってしつこくて』
「え、チャラい系の人ですか?」
『チャラいっていうより…コミュ力凄まじい系?』
「人懐っこいってこと?」
『まあ、そんなとこ。汐里と気が合いそうなタイプ』
「へえ、楽しみ!じゃあ、人数揃ったらまた連絡しますね」
『ああ、頼むわ』
サクサクやりとりして、電話を切った。
合コンなんて久しぶりかも。
正直、今は彼氏がすごく欲しいとも思わない。
友達のノロケ話を羨ましく思うことはあるけれど…。
はっきり言って私、男の人にガッカリされることが多いのだ。
「もっと控えめな子だと思ってた」
「女の子に仕切られるのはちょっと…」
そんな風に、距離を置かれたことが何度かある。
それも直接言われた訳じゃなく、人づてに。
勝手にイメージ作り上げて、勝手にガッカリするってどういうこと?
これが私だし、見た目と性格がアンバランスだなんて知らない。
男の人と知り合う機会が増えるだけ、こっちの方こそガッカリすることも多い。