第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
穏やかな梨央の声は、確かに俺の中に入ってきたはずなのに…
上手く反応できない。
「は…、え…?……ちょ、待っ…」
戸惑う俺を、梨央はただ見守ってくれている。
「それは…プロポーズ…?」
「うん」
本当に予想外の出来事で。
ただただ、呆然とすることしかできない。
「あのね…私いつもてっちゃんに何かしてもらうばっかりだから……一生に一度くらい、カッコつけてみたかったの」
至極真面目な顔をしてそんなことを言う梨央に、もう言葉を失った。
今まで見てきた、色んな梨央の顔が浮かぶ。
でも、こんなに覚悟を決めたような顔は初めてで。
すっげービックリしてんのに、確実にじわじわと嬉しさが込み上げてきて。
思わず口元が緩んだ。
「何だよ…。逆プロポーズとか…すげぇカッコイイな」
梨央をグッと引き寄せ、抱き締める。
返事を考えるまでもない。
俺だって、ずっとそう思ってきたんだから。
「じゃあ俺を、梨央の旦那さんにして下さい」
「………ほん…と…?」
「もちろん。俺、すっげー幸せもんだわ」
「え?」
「心底惚れた女がプロポーズしてくれるなんて。そんな経験できる奴、なかなかいねぇよな?」
「そうかな…」
「そうだよ」
カッコイイプロポーズしたくせに、梨央は今更顔を赤くしてる。
こういうとこは梨央らしくて可愛くて、愛しさばかりが募っていく。
「梨央。二人で、幸せになろうな」
「うん…」
ゆっくりと唇を重ねる。
俺のキスでほんのり移った、チョコレート味の梨央の唇。
また啄んで奪って、このまま体ごと溶け合ってしまえばいい。