第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
抱き締めた腕の中で、梨央が言う。
「愛してるよ」
堪らなく幸せで、涙が出そうになって…
そんな顔を見られないように、また強く抱き直した。
12歳の夏の日。
君と出会えてよかった。
全てはあの日から始まった。
桜の季節が来る度に思い出していたんだ。
少し先を行く、君の姿を。
近くにいるのに遠く感じていた、君のことを。
時を経て俺たちの時間はまた交わって…
恋をして、そして、愛を育んだ。
君との時間を沢山重ねて、ここまで来たこと。
ひとつひとつが、奇跡に思える。
なあ、梨央。
この先の人生、ずっとこの腕の中で抱き締めるから。
時には優しく。
時にはキツく。
もし苦しかったら、そう言ってくれよな。
もう散々カッコ悪いところ見せてるけど、俺の弱いとこ、梨央になら曝け出せるから。
その代わり、梨央の弱いところは、俺が支える。
二人で生きていくんだから、一人で頑張らなくていい。
甘えて、寄り掛かって、
支え合って、労りあって…
そんな風にして、
ずっとずっと、一緒に生きていこう。
腕の中の梨央が俺を見上げた。
柔らかく微笑んで、愛おしそうに、その瞳で見つめられる。
今、俺の伝えたいことは、ひとつだけ。
この先何度だって言うよ。
「梨央、愛してる―――」
【 end 】