第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
夜は夜でまた寒さが堪えて。
暖かな室内に帰り着き梨央の顔を見た途端、ホッとする。
今朝も会ってるのにな。
会える度にこんなに嬉しくなるのは、梨央だけだ。
「チョコもらえた?」
「ああ、まあね」
「ふーん?」
「あ!義理しかねぇからな!」
「そんなこと言ってないでしょ?」
夕食を食べる傍ら、俺は受け取ったチョコを取り出した。
「これは食堂のパートさん。こっちは前の部署の先輩。あと、掃除のおばちゃん。で、同じ部署の社員からは、全員にコレ」
それぞれ、ラッピングされた市販のチョコ。
誰から貰ったかも申告する。
暗に、成瀬からは貰ってねぇぞ、っていうアピールもしつつ。
梨央はそれを見ながらおかしそうに笑う。
「別にそんなの気にしてないよ?掃除のおばちゃんに貰うとこがてっちゃんって感じ! "いつもありがとうございまーす" とか言って、愛想振り撒いてるんでしょ?」
「人聞き悪ぃな!愛想じゃなくて、本当にそう思ってるから声掛けてるんですケド!」
「わかってるよ。てっちゃんらしい。そういうところ、好き」
梨央の "好き" には、いまだに胸が鳴る。
こんなこと知ったら、梨央は笑うだろうか。
食後には、ソファで二人並んでデカフェのコーヒー。
それから…
「はい、これ。チョコレート」
ラッピングされた小さな箱がテーブルの上に置かれた。
あれ?
手作り…じゃないよな、コレ。
リボンに印字してあるのは、海外の有名なチョコレートブランドの名前。
「楽しみにしてて」って言うから、てっきり何か作ってくれてるのかと思っちまった。
ああ…もしかしてコレ、個数限定のレアチョコとか?
とにかく、手作りだろうとなかろうと、梨央が俺を思って選んでくれたことが嬉しい。
「ありがとな」
そうお礼を言うと、梨央は続ける。
「それは、明日食べて」
「え?」
「本命は、こっち」