第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
梨央の手を引き、抱き寄せる。
抱き締めてるわけでも、キスしてるわけでもない。
たったこれだけのことなのに、今、俺の鼓動は忙しない。
温かくて柔らかくて、甘い梨央の香りがする。
「正直言うとな。俺、梨央がいてくれないとすげーダセェんだわ。マイナス思考は度を越してるし、弱音吐きまくりだし、ヘタレだし」
「ヘタレ…」
「ああ。木兎にも、汐里にも、大将にも言われた。梨央を守りたいなんて思ってたけどさ。俺を強くしてくれてたのは、梨央だったんだよ。……だから…そばにいて欲しい」
格好つけなくてもいい。
ありのままの俺の想いを、全部梨央に伝えたい。
何度でも、どんな言葉を使ってでも。
「本当に…いいの?私がそばにいて…」
「当たり前だろ…」
抱き寄せていただけの体を、グッと腕の中に閉じ込める。
もう、梨央の体を抱き締めるこの感覚しか知りたくない。
「ずっとこうしたくて堪らなかった。梨央がここに戻ってこねぇかもって思ったら…すげー怖かった…」
「うん…」
「何か…カッコ悪いとこばっか見せちまってるな…」
嫉妬したり、向き合うのが怖くて逃げたり。
大将たちの言うとおり、ヘタレってやつだ。
「カッコ悪いてっちゃんも、好きだよ。私だって、いっぱい弱いとこ見せちゃったし」
「じゃあ、もう一人で頑張るのはやめよう。二人で支え合っていけば……きっと、大丈夫」
「うん…」
梨央の両頬を手の平で包む。
街灯の光が梨央の姿に陰影を作り、とても綺麗だ。
梨央の瞳をじっと見つめ、思う。
こんなこと言うの、キザったらしいだろうか?
いや、伝えたいことは、もう躊躇わずに。
「梨央の瞳、すげぇ綺麗。吸い込まれそう」
途端に照れたように笑う梨央。
そっと、唇を近づける。
今度こそ、梨央に届け―――。
「愛してる」
重なった唇にも想いを乗せて…
キスの数だけ俺を感じてくれよ。
「鉄朗……私も、愛してるよ」
あまりにも幸せ過ぎて…
この瞬間が永遠に続けばいいと、本気で思った―――。