第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
『俺に優しくされて、嬉しそうにしてたじゃねぇか!思わせ振りなことすんなよな!』
『そんなことしてない…!』
竜くんはそばにあったバスケットボールが入った籠を蹴り上げると、体育倉庫を出ていく。
自分の身に起こった出来事が怖くて信じられなくて…
全身の震えは治まらない。
とにかく、大事に至らなかったことだけは酷くホッとした。
けれど、胸を撫で下ろしたのも束の間。
鉄の大きな扉が閉ざされたと思った途端、外から鍵のかかる音がする。
『な…っ、嘘でしょ…!?竜くん!!やめて!!』
『調子乗んなよ!お前の味方なんて、もういねーから!』
『出して!お願いっ…!!』
どれだけ扉を叩いても、もうそこには誰もいないことがわかる。
その夜。
警備員のおじさんが見回りに来るまで、私は一人、体育倉庫に閉じ込められたままだった。