第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
俺の……気持ち?
そんなもの、ずっと変わらない。
こんなにも愛しいと思った女はいない。
こんなに自分を狂わせるほど魅了された女も。
一緒にいて心から安らげる女も。
全部、梨央が初めてだ。
「好きだよ。梨央を…愛してる」
お前が梨央を想う気持ちより、もっとだ。
「愛してるって言えるほど好きなのに、何でそんなヘタレてんの?」
眉根を寄せて鼻で笑う大将。
でも、不思議と噛みつく気にはならない。
「ヘタレちまうくらい女に惚れる気持ち、わかってたまるかよ」
「それはこっちのセリフだ。心底好きになった人が、よりによって黒尾を見てる…見ず知らずの男じゃなくてな。そんな苦しさ、わかってたまるか」
一瞬苦悶した表情を見せると、大将は伝票を持って立ち上がった。
「梨央さんがどんな決断しても、俺はそれを受け入れる。俺を選んでくれるなら絶対大切にするし、お前を選ぶなら、その時は……」
最後、少しだけ言葉を濁して、大将は店を出ていってしまった。
"あとは、あいつ次第" ―――?
違うだろ。
あとは俺次第だ。
俺から梨央を手離すのか?
大将のところへ行ってしまうかもしれない梨央の後ろ姿を、黙って見てるのか?
バカか、俺は。
しっかりしろ…!
傷つけた分、ありったけの愛を梨央に伝える。
それでも受け入れてもらえなかった時。
俺たちが終わる時は、唯一その時だ。
今日の今日まで迷いのあった俺だけど。
もう、迷わない。
俺から梨央を手離すなんてことはしない。
もしかしたら、手遅れかもしれない。
大将と梨央との間のことはわからない。
考えたくねぇけど、梨央は大将といることに安らぎを覚えちまってるのかもしれない。
けど、梨央がまた俺の胸に飛び込んできてくれるなら。
その時は、この腕の中でめいっぱい愛してみせる。