第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
「お疲れ様~!!」
やって来たのは、お店から歩いてすぐのバー。
てっちゃんと会う時にいくバーは、店内もそんなに広くはなくて隠れ家的な感じ。
一転、今日訪れたのは、広くて開放的な明るさのあるお店。
お酒も進んで、二人ともいい感じにアルコールが回ってきてる。
南さんは、お酒が入るといつも以上に陽気。
喋って笑って、実に楽しそう。
優くんはお酒あんまり強くないのかな。
時々あらぬ方向に目をやってボーッとしてるけど…
大丈夫…?
様子を窺っていると、ふいに視線が絡んだ。
「何すか?」
「優くん、酔ってる?」
「酔ってねぇよ……っす」
……うん、酔ってるな。
「そういえばさぁ。誕生日に黒尾くんから貰ったワイン、あれ美味かったよ」
「ほんとですか?私も好きなんですよ」
先日の南さんの誕生日。
南さんにワインをプレゼントしたてっちゃん。
それを聞いた優くんは、怪訝な顔で南さんを見る。
「何?兄貴あいつに誕生日プレゼントとか貰う関係?」
「いや、たまたま誕生日覚えててくれたんだよ。黒尾くんマメだよなぁ」
「狙われてんじゃねぇの?あいつ見境なさそうだし。武田さん、気を付けた方がいいんじゃないっすか?兄貴に盗られるかもよ?」
今の優くんは、普段の落ち着いた紳士的な印象とはかけ離れてる。
そういえば、最初にてっちゃんと会った時もこんな感じだったっけ。
「ごめんね、武田さん。こいつ酒弱いんだよ。これが素だから。いつもはネコ被ってるだけだから」
「そうなんだ…。そんな気遣わなくてよかったのに。私、こっちの優くんのが好きだな」
優くんは一瞬黙りこんでから私を見て、そしてポツリと呟いた。
「じゃあ、ネコ脱ぎます…」
「うん、脱いじゃえ脱いじゃえ」
「俺、結構口悪いですけど」
「え…?お手柔らかにね…」
目の前に置かれたカクテルを少しだけ飲むと、気だるそうに頬杖をついてまたそっぽを向いてしまう。
私のが年上だけど、それだけの理由ならあんまり気を遣って欲しくはない。
てっちゃんの友達だし、優くんとは仲良くやっていきたいもん。
その時、テーブルに置かれた南さんのスマホが鳴る。
「あ、ごめんね。彼女だわ…。もしもし~?」
私に目配せして席を立ち、南さんは騒がしい店内から外へ出ていく。