第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
それぞれ片付けや明日の仕込みに時間を費やす。
黙々とこなし、私の仕事は取り合えず終了。
厨房を見渡してみれば、昼間届いたままの野菜が段ボールに積まれているのが目に入った。
仕分けだけしとこうかな…。
明日楽だろうし。
段ボールに手を掛けて、ヨイショ、と持ち上げる。
すると手にのし掛かったはずの重みは、一瞬で離れていった。
「俺、運びますよ」
私の手から段ボールを持っていく優くん。
調理台の方へそれを運び、残された段ボールも一度に二箱、軽々と同じように抱えてく。
「ありがとう…」
細身に見えるのに、やっぱり男の人は違うな。
優くんもバレーしてたんだもんね。
体の造りもしっかりしてるのかも。
「重い物は無理しないで、遠慮なく言って下さいね」
手をパタパタ叩きながら、流し目で微笑まれる。
「うん…」
何か、優くんって優しくて紳士的な上、妙な色気があるんだよね…。
その流し目とか、不覚にもドキッとしちゃう。
深い意味は、もちろんない。
イケメンに胸を高鳴らせるミーハー心みたいなものだ。
ミーハーとか…今時言わないか…。
「二人とも終わった~?」
別室にいた南さんが扉を開けて顔を覗かせた。
優くんがいなかった頃は、仕込みも事務処理も全部南さんがこなしてた。
今更だけど、大変だっただろうな。
優くんが来てくれて、南さんの負担も随分減ったんじゃないかと思う。
「みんなで飲みに行かない?明日定休日だし。今日の打ち上げ!」
「俺はいいけど…」
優くんが言葉を濁して私を窺う。
それに気づいた南さんは、あっけらかんと私に提案する。
「ああ、黒尾くんと約束してる?黒尾くんも呼んじゃうか!」
「げっ…」
「いえ、てっちゃん今日は残業らしくて。三人で行きましょう!」
優くんのリアクションに苦笑いしつつ、私も飲みのお誘いを受けた。
南さんとはプライベートでも飲んだりしてるけど、優くんとはこれが初めて。