第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
空いたお皿をトレイに乗せて厨房へ戻ると、コース料理は全て完成されていた。
ホール担当の子がそれを運んでいくのを見送る。
予約のお客さん以外のオーダーも同時進行で出来上がっていて、やっと緊張の糸が解かれる。
「さすがに集中したなぁ、優」
「何とかなって良かったよ」
「お疲れ様です」
二人がホッとした顔を見せるから、私も思わず力が抜けた。
それからはいつも通り自分の仕事こなし、お客さんを見送って、ようやく今日の業務は終了。
無事に閉店時間を迎えた。
「本当にすみませんでしたっ…!」
紗菜ちゃんが改めて私たちに頭を下げる。
確かに大きなミスだったけど、あれから紗菜ちゃんも頑張って動いてくれてた。
「まあ、済んだことは仕方ないよ。これからは気を付けて」
「二度目は勘弁してよー?紗菜ちゃん!」
優くんも南さんもそれはわかってるから、必要以上に咎めたりはしない。
「はい。梨央さんも、すみませんでした!」
「私は全然。無事に終わって良かったね」
「はい…」
店内の掃除を済ませた後、紗菜ちゃんを含め、バイトの子たちは帰っていく。
南さんは今日の売り上げの計算をするのに事務所に篭り、厨房には私と優くんだけになった。