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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】





どうしよう―――。



今、私は静かなる格闘をしている。



開店前、暑い中外の掃き掃除をして、さあ涼しい店内へ戻ろうと思ったその時。
ドアノブのそばにセミが止まっているのを発見してしまったのだ。

セミとか怖いんですけど…!
いきなり飛んでくるし、飛び立つ時の鳴き声?にもビックリするし。
子どもの頃無邪気に捕まえてたのが、ほんっと信じられない。

どうしよう……。

取り合えず、手にしていたホウキをそっと伸ばしてみる。
こっちに飛んできたら本当に怖いから、できるだけ間合いをとって…。
腰引けながら、様にならないフェンシングみたいな格好をする。
それから、ドアノブの下の方だけホウキの柄でツンツンつついてみるけど…。

ビクともしない…!
何で!?
そこに止まってなくてもいいじゃない!
こんな間抜けな格好、誰かに見られたら恥ずか死ぬ…!
早くどこかに飛んで…


「何してるんですか?」


「…ッ!?」


後ろから届いた柔らかな声に、体が跳ねる。
振り返れば、笑いを堪えながら私を見る優くんが立っていた。

「何かすごい面白い格好なんですけど…」

「これは…っ、やむを得ない事情が…」

私が指差す方向を見て、優くんが静止する。
それからゆっくりとこちらへ視線を戻した。

「やむを得ない事情って、まさかコレですか?」

「……はい」

セミが原因でこんなところで格闘していたなんて、何とも情けない…。

優くんは難なくセミを捕まえると、扉のそばに植えてあるトネリコの木にそっと止まらせた。

「女の人は、虫苦手な人多いですよね」

笑顔でそう言いながら、扉を開けて待っていてくれる。

「どうぞ?」

「あ…ありがとう…」

私は促されるまま店内へ入った。
優くんも後に続き扉を閉めると、私が使った掃除道具を片付けてくれる。

落ち着いてて、尚且つ紳士的な優くん。
てっちゃんとは違う意味で、年下とは思えないな…。


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