第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
てっちゃんの手が顎に触れる。
指先に力が入ったかと思えば、顔を彼の方へと向けさせられた。
すぐに、ちゅっ、ちゅっ、と啄むキスが降ってくる。
「なぁ、梨央…」
何だか甘えるように名前を呼ばれて…。
ちょっとだけならいいよ、って本当は言ってあげたい。
でも、人様に見られるのはマズイ。
「ん…ダメだってばぁ…。そんな時間…ないでしょ…?人…来ちゃう…」
私の言ってること、聞こえてる?
胸元にあった手は、帯の下の合わせを開いてショーツに触れる。
抵抗する隙もなくその手が布の中へ。
「ちょ…っ、てっちゃん、ほんとに止めて…」
「無理。止まんね」
「や…見られちゃうから…っ」
「悪いのは梨央。俺のココ、こんなにしてくれちゃって」
「後で…っ、後でいっぱいしよ?」
「後でもするけど、今もしたい」
「そんな、ああっ…」
てっちゃんの指が中へ入ってく。
やだ…いつのまにか私、濡れてる?
すぐに指、飲み込んじゃった。
部屋の外からは、食器がぶつかる音や仲居さんたちの声が聞こえてくる。
パタパタと廊下を行き来する足音も。
やだ…これ、てっちゃん止める気全然ないよ…。
「てっ…ちゃ…っ」
太い指がナカで蠢いてる。
こんな状況絶対マズイのに、その音量はどんどん増していく。
「こんなに濡れてんのに嫌とか言うの?溢れてくんだけど」
「ばかぁ…」
ダメだとわかってるのに、快感の二文字が頭を過る。
いつものように、存分にその波に浸ることができたら…。
私が抵抗を止めれば、そこに行ける。
でも……
そんな危ない勇気、私にはない。
必死に理性の糸を手繰り寄せ、てっちゃんの腕を押し退けようと試みる。
けれど、そこに留まったままビクともしない。
どうしよう…
もしこんなとこ見られたら…
本当に、ダメ……!
「こらっ!!鉄朗!!」
「……」
思わず大きな声でてっちゃんを制する。
指の動きはピタリと止まった。
ひとまずホッとして振り返る。
そこにいるてっちゃんは、ポカンとした顔をして私を見つめていた。
「ダメ。……でしょ?わかって?」
嗜めるみたいに、念を押す。
嫌じゃないんだよ?
てっちゃんに触られるのは、嬉しい。
本当はこのまま体を重ねたい。
でも、今は止めておかなくちゃ。