第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
「はぁ~…気持ちいい……」
肩から腕にかけてを外気に触れさせ、残りの体は熱い湯船の中へ。
今私は、露天風呂から遠い景色を眺めている。
こんなにゆったり過ごすの、どれくらいぶりだろう。
今日明日は、仕事の心配をすることもなく、家事の煩わしさもない。
しかも、一緒にいるのは大好きな人―――。
てっちゃんといると、まるでこうして温泉に浸かっているみたい。
じんわりと温かくて、心も体も開放できて、芯まで癒してくれる。
気をつけなきゃいけないのは、思わぬ言動で逆上せてしまいそうになるところ…だったり。
こんな風に思える人が、私のことを好きでいてくれるなんて、奇跡だ。
私のことをいつも大切にしてくれてる。
だから私も。
てっちゃんを、大切にしよう。
火照るほど長湯をして、私はようやく部屋へと戻る。
身に纏っているのは、てっちゃんが選んでくれた浴衣。
品があって素敵。
仕草まで品良くしなくてはと、何だか背筋が伸びる。
「ただいま」
部屋の扉を開けて畳を踏みしめる。
座椅子に腰を下ろしてスポーツドリンクを飲んでいたてっちゃんが、顔を上げた。
「おかえり」
……。
やだ……
浴衣……
すっごく、似合う……!
「やーっぱ俺の見立てどおり。似合うな、それ」
そう言って褒めてくれるけど…。
いやいや!
私なんかより、てっちゃんの方がうんと似合ってる!
少しはだけた胸元とか、何それ…?
裸よりもドキドキしちゃう…。