第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
「え……?露天風呂?」
窓の向こう側には、檜の露天風呂。
露天風呂付きのお部屋は、予約とれなかったって言ってたのに……。
「うそ…ほんとに…?」
「サプライズ成功?」
見上げれば、てっちゃんはいつものニヤリ顔でイタズラっぽく笑ってる。
「うん、成功!ビックリ!すごい嬉しい!」
「よかった。最初はほんとに満室だったんだけどさ。直前でキャンセル出たから、変更してもらった」
「そうなんだ…ありがとう…」
意外と広いし、緑の木々や遠目に見える海とも相まって、すごく雰囲気良くて素敵。
露天風呂付きのお部屋って、実は一度しか泊まったことがない。
しかも、夏帆との旅行だった。
"彼氏"とは、これが初めて。
一緒に入ることもできるよね……なんて。
浴衣姿のてっちゃんを想像した時もそうだけど…。
何か私、思考が男の人みたいになってない?
この先を思うと、ドキドキして落ち着かない。
仲居さんにお茶を淹れてもらって、ちょっと一腹。
部屋の露天風呂には、夜ゆっくり入ろうってことになった。
夕食の時間までにはまだ時間もあるし、私たちは早速大浴場へ。
さっき選んだ浴衣を手に、男女が別れる大浴場の暖簾の前まで辿り着いた。
「私時間かかると思うから、先に戻っててね」
「ああ、じゃ鍵もらっとく。ピカピカに磨いてこいよ~」
意味深な笑顔と共に、てっちゃんは手を振りながら男性用の大浴場へ入っていった。