第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
「やっぱり拾ってくれてたみたい。男の人だった。何度もかかってくるから、落とした人の連れかもと思って出てくれたって」
「そうなんだ…。よかった…!」
「駅前の交番に向かうとこだったらしいよ。途中にある本屋さんの前で待っててくれるって。行こっか」
「うん」
見つかってひとまず安心。
拾ってくれた人にも迷惑かけちゃったな…。
でも、夏帆がいてくれて本当に助かった。
駅までの道をまた二人で歩いていくと、この辺りでは大きめの本屋さんが見えてくる。
その自動ドアの前。
背の高い男の人と、小学生くらいの女の子が立っていた。
出入りするお客さんはいるけれど、立ったままでいるのはその二人だけ。
きっと、あの人だ。
私は急いでそこへと近づく。
「あの…携帯拾ってくれた方ですか?」
声をかけると、こちらを見る切れ長の瞳と目が合った。
「あ…そうです」
「ありがとうございました。助かりました」
「いいえ。勝手に電話出るの悪いかなーと思ったんですけど。一人で花火に来る人なんてそういないだろうし、連れの人が電話してきてるんじゃないかと」
「はい、そのとおりで…」
見た感じ、年は同じくらいかな。
すっきりとしたクールな目元と、それとは対照的な、穏やかな笑みに柔らかな口調。
見ず知らずの人に迷惑をかけてしまったのだから、申し訳なさでいっぱいだったけど。
その笑顔で少しだけ緊張が解けた。
私たちのやり取りを見て、そばにいた女の子がからかうように笑う。
「スグルくん、何回も電話かかってくるからすごい焦ってたよね。勝手に出るの犯罪かなぁ!?って!」
「おい!それ言うなって言ったろ!アイス買ってやんねーぞ?」
「ごめーん!忘れてた!」
見た目から受けた印象と違って、子ども相手に慌ててる。
何だかギャップがおかしい。
気まずそうに私に向き直ったその人は、持っていたスマホを差し出した。
「じゃあ、これ」
「本当にありがとうございました。小さい子も一緒なのに」
「いえ。それじゃ…」
「お姉ちゃん、バイバーイ!」
「バイバイ!ありがとうね」
その人と女の子は、手を繋いで駅の方へと歩いていった。