第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
*夢主side*
「え!?梨央彼氏できたの!?」
「うん…」
「何で私なんかと花火来てんの!彼氏と来ればよかったじゃない!」
店がお盆休みに入った今日。
高校時代の親友、夏帆との約束どおり、私たちは二人で花火会場に来ていた。
てっちゃんのことを話したら、この反応。
まあ、予想はしてたんだけど。
「彼は今日仕事なの。そうじゃなくても、先に夏帆と来るって約束したんだし」
「そうなの?ならまぁいいか…。でも梨央、前の彼氏と別れたとこじゃん。次々彼氏できてズルい!」
「次々って、今回だけだよ。修一さんの前は二年くらいいなかったもん。夏帆こそ、いつも別れて半年もすれば彼氏できるじゃない」
「まあ…そうだね…」
感情的に声を高くしたと思えば、私の言葉に納得して落ち着きを取り戻す。
こんなやり取りは、高校の頃から変わらない。
夏帆はショートカットによく似合う、藍色の浴衣を着てきた。
私はこの前買ったばかりの、撫子柄の浴衣。
普段辛口の夏帆も、大いに褒めてくれた。
てっちゃんが見たら、何て言ってくれたかな。
来年は一緒に来られたらいいな。
出店でクレープとリンゴ飴を買って、人込みの隙間に腰を下ろす。
花火が始まるまでの間、それを食べつつお喋り。
「新しい職場はどう?上手くやれてる?」
ホテルからの転職を考えた時、夏帆には色々と相談に乗ってもらった。
いつもこうして気にかけてくれて、ほんと感謝してる。