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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】



足を踏み入れたバーは、開放的な空間だった。
カウンターの真逆に位置する、天井まで続く大きなガラス窓。
きっと、晴れていれば満天の星が望めるだろう。
しかし生憎、今夜は雨。
しかも、時間を追う毎にそれは激しさを増していく。


空いていたカウンターに腰を落ち着けると、軽く食事を頼み、俺の目の前にはカクテルが一杯。
成瀬はノンアルコール。
今日の仕事が一段落ついたことで、やっと肩の力も抜ける。


「お疲れ様」


「お疲れさん」


グラスを合わせ、疲れた体にアルコールを取り入れる。
それが喉から降りていくのを感じながら、フウッと息を吐く。
すると、そのタイミングで成瀬がクスッと笑った。


「黒尾くん、仕事終わった途端、目合わせてくれないよね。私のこと苦手?」


はい。よくお分かりで。

即答したい気持ちはあれど、同期で仕事仲間。
今後に支障来すような返事は、さすがにしない。


「苦手っつーか、何考えてるかわかんね」

「そう?すごくシンプルだと思うけど」

「どこが?」

「例えば。今夜は私、お酒飲んでない。どういうことかわかる?」

「……」

数ヵ月前の成瀬に言われたセリフが、すぐに思い出される。

『今度は飲んでない時に言うね』

酒が入ってることを理由に、俺はこいつの告白めいた言葉をかわした。
あの時のやりとりを、ここでやり直すつもりなのか?


「わかった?」


少し身を乗り出して、俺の顔を覗く。
あの時と同じ、甘ったるい香りが鼻を擽る。
正直、苦手な香りだ。


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