第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
その日の天気は雨だった。
新幹線に揺られ、軽井沢へ到着した俺と成瀬。
二人きりってことに構えてはいたが、成瀬は仕事は仕事できっちりこなすタイプ。
そういうとこもあって、上司受けもいいんだけども。
視察先までの交通手段だったり、視察内容の確認。
朝から交わすのは主に仕事の話で、そこから逸れた話題は挙がらない。
ひとまずはホッとしながら、到着先の施設へ入った。
オープン前にも一度来ているが、集約客を踏まえたプランニングの見直しが必要だ。
オーナーとの打ち合わせを済ませ、施設内を巡り、提携先のホテルにも顔を出す。
昼過ぎから始めた仕事は、日が落ちるまで時間を要した。
尚且つ、社へのメール連絡をした後諸々やりとりをすれば、すっかり食事をとるタイミングを逃していた。
腕時計を確認する。
時刻は21時。
ホテルの俺の部屋で各々パソコンに向かい合い仕事をこなしていたが、それも目処が立ち、ようやく俺たちは今日の業務から解放された。
「さすがに腹へったな」
「この時間じゃ、レストラン閉まってるわね。外出て軽く食べる?」
「そうだな」
取り合えず空腹を満たして、今日は早く休みたい。
提携先のホテルには、木製の梁が巡らされた厳かなチャペルが併設されている。
明日は新婚旅行向けの営業も兼ねた、打ち合わせの予定だ。
俺と成瀬はホテルを出る。
外は雨足が強かった。
傘を開けば、そこに強く打ち付ける粒。
この雨の中を長らく歩くのも億劫だ。
俺たちはホテルから目と鼻の先にあるバーへと入った。