第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
「大体そういうことって、グラビアアイドルくらいおっぱい大きい人じゃないと無理だよね…」
自虐なのか何なのか。
口を尖らせながらブツブツ呟いている。
可愛いなぁ…オイ。
「大丈夫。梨央の体、めちゃくちゃ俺好みだから」
「……ホント?」
「ホント。体だけじゃないけどね」
ベッドの半分以上を俺の体が占領してるから、自然と寄り添う格好になるわけだけど。
それでももっと近づきたくて、梨央に手を伸ばす。
「もうちょいこっち来いよ」
腕の中に梨央を閉じ込め、髪に顔を埋めてそこから漂う香りを吸い込んだ。
同じシャンプー使ってんだから、俺もその香りを纏ってるはずなのに。
梨央の香りだけ特別に感じる。
すげぇいい匂い。
すげぇ落ち着く。
「今日会えると思ってなかったから、嬉しいな」
胸元から、さっきとは打って変わって柔らかな声が届く。
ああ…俺も。
こうしていられることが、嬉しくて幸せだ。
"好き"とか"愛してる"って感情は、果てまであるんだろうか。
そんなもんがあるとしたら、もうとっくに辿り着いてしまいそうなほど、俺は梨央に溺れてる。
「気持ちいい」
吐息混じりの声が、俺の首元を擽った。
それからゆっくり顔を上げて、暗闇に浮かぶ潤んだ瞳でジッと俺を捕らえた。
梨央がこんな目で俺を見るときは、キスが欲しい時。
ねだって来るのを待つか。
梨央から唇を寄せてくるのを待つか。
意地悪く、言葉で言わせるか。
それは気分によって違うけど、今夜はこうしたい気分だ。
俺から顔を近づけ、瞼が伏せられていくのを確かめながら、そっと唇を塞いだ。
背中に回された梨央の腕に、キュッと力が入る。
好きだ…堪らなく。
想いを届けるみたいに、少しずつ丁寧に、何度も何度もキスをする。
ゆっくり瞼を上げてみると、そこにあった梨央の瞳が、"もっと欲しい"とねだっていた。