第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
すると梨央は、小さく首を振った。
「私も一緒にいたいよ。でも…そうじゃなくて、あの……今日…ね、"できない日"なんだけど…」
「……」
ああ…そういうこと。
セックスを期待させといて、できないってわかったら悪いと思ってんのか…。
ほんと、気ぃ遣いすぎ。
「なあ、梨央。俺たちは恋人同士だよな?セフレじゃねぇ」
「うん…」
「だから、一緒にいられる時間が大事。な?」
「……うん。ごめんね」
「ごめん、なんて言わなくていい。何にも謝ることじゃねぇだろ?今から朝まで一緒にいられるとか、俺すげぇ嬉しいから」
「うん…私も…」
ようやく、ホッとしたように笑う梨央。
何をするでもなく、ただ二人でいるということ。
それさえも、俺にとっては大切な時間だ。
お互い明日は仕事だから、梨央の家に着いても風呂に入って寝るだけ。
梨央は寝室から、俺の部屋着と下着を出してくれた。
いつでも泊まれるように、梨央の家に置きっぱなしにしてある。
「お風呂、先に入ってね」
「サンキュー」
勧められるまま風呂でサッパリして、俺と交代で梨央も入浴を済ませた。
さっさと寝なきゃ明日辛くなるのはわかってんだけど、二人ベッドに入って、少しだけお喋りする。
「ね、てっちゃんの高校生の頃の髪型、寝癖だったって本当?」
「ああ…。研磨に聞いた?」
「うん。どんな風に寝たらあんな寝癖つくの?」
「どんなって…こうやってうつ伏せになって枕に顔埋めて、両端挟むだけ」
頭の下の枕で再現してやると、何が面白いのか梨央は笑い出す。
「あはは!息できるの?それ!」
「できるし。……あ!今度梨央に枕代わりしてもらおっかな~」
「抱き枕?」
「それもいいけど、ココ」
梨央の胸の膨らみをつつく。
「ホラ。この寝相ってさぁ、アレに似てね?」
「もぅ…何言ってるの?すぐエッチなこと言う」
「俺エッチなことなんて言ってねぇけど。"アレ"っつっただけだし。何想像してんのォ~?」
「……」
「もしかして、想像しちゃった?顔パイズ…」
「もうっ!言わなくていいってばっ!」