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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】



「ごめんね、てっちゃん!待たせて」

「全然。俺が勝手に待ってただけだし」

息を切らしながら店に入ってきた梨央は、俺の姿を見つけると足早に近づいてくる。

急いで来たのか?
少し髪が乱れてる。
俺はそれをそっと手櫛でといた。

「そんなに早く会いたかった?」

からかい半分に言うと、俺が触った場所に手の平を当てながら、小さく頷く。


あー、クソ可愛い。
すげぇホッとする…。

さっきまで抱えていた嫌な疲労感が、スーッと消えていく。





「旅行さ、温泉なんてどう?」

「わ、いいね!行きたい!」

声を弾ませる梨央と一緒に飲みながら、旅先でどう楽しもうか話に花が咲く。
温泉地へ一泊。
丸二日一緒なんて、初めてだ。



「そう言えば、明後日軽井沢だったよね?大変だね。色んなとこに出張で」

「ああ…。まあ、行くのはいいんだけどさ…」

成瀬のことが頭を過る。
梨央と会えたことで、忘れかけてたっつーのに。


「どうしたの?」


不思議そうに顔を覗き込んでくる梨央。
仕事とは言え、女と二人で行くなんて、わざわざ言うことじゃねぇよな…。


「……いや、何でも。土産買ってくるから」


「いいよ、そんな。仕事で行くのに」


遠慮がちに俺を見つめてくる顔や、柔らかな声や仕草。
めちゃくちゃ癒される。

あー…そろそろ、終電の時間が迫ってる。
明日も仕事だってのになぁ…。


ダメだ……離れがたくなっちまった。


「梨央…このまま、家行っていい?」


「え…?でも明日…」


「朝、一回帰る」


「うん…」


少し視線を逸らした梨央は、何だか返事を渋っているようだった。



ああ……そっ…か…。
そうだよな…。
仕事で疲れてるだろうし。
一人でゆっくりしたい日もある…よな…。


「わりぃ。またにするわ」


梨央の性格からして、断るのは苦手だ。
まだ一緒にいてぇけど、梨央の負担になるのなら、今日は我慢だ。
少し前の俺なら、強引に押しきってただろうけど。
ま、大人ですからね。
それに、梨央に無理はさせたくねぇし。
俺から引くことにする。


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