第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
喧騒の中、オフィス街を歩く。
あー、腹へった。
晩飯どうすっかな…。
そんなことを考えていたら、後ろから明るい声が飛んできた。
「テツさーん!お疲れ様です!」
「…汐里」
「どうしたんですか?何か猫背!」
「そっかぁ?」
汐里は駅近くのでエステサロンで働いている。
職場が近い俺たちは、時々駅までの道すがら、こうしてバッタリ遭遇する。
「ごはんまだですよね?」
「ああ。どっか食い行く?」
「南さんとこは?梨央さんにも会いたいし」
「もうラストオーダーの頃だから無理だな。それにこの時間じゃ、梨央も厨房から出て来れねぇだろうし」
「……"梨央"?」
汐里は顔をグッと上げて俺を凝視してくる。
首痛そ…。
小さいからね、そうなるんだよね。
「何?」
「"梨央"って、呼び捨て!もしかして付き合ってます?」
「あー、そっか。付き合ってるよ」
「そっかぁ…そうなんだ!やっぱり!」
汐里は目を輝かせて一人うなずいている。
「やっぱりって…。俺態度に出てた?」
「テツさんより、梨央さんかなぁ。テツさんと二人で話してる時、すごく嬉しそうにしてて。バレー見に行った時も、テツさんのことばっか目で追ってましたよ?」
「マジ…?」
「マジです」
どんだけ余裕なかったんだよ、俺…。
いつもなら、割りとそういうこと気づけるんだけど…。
「それに、テツさんは何が本気か冗談かわかんないし…。あ!でも、ひとつだけアレ?って思ったことがありました!」
何のことかわからず、汐里の言葉の続きを待つ。