第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
*黒尾side*
マズイ……。
梨央の制服姿見てたら、なんか昔を思い出して……。
今俺、すげーダセェこと言った…。
あの頃。
手なんて届かないと思ってた梨央は、どんな男に体を開いてたんだろうか。
俺や研磨の前では、"お姉さん"の顔をしていた梨央。
でも、そいつの前では"女"の顔を見せていたワケで。
そう思ったら、堪らなく悔しくなった。
梨央の初めては、俺が欲しかった。
梨央の過去をなかったことにしたい。
その上自分のものにしたい、なんて。
何つー幼稚な嫉妬だよ…。
「私ね。実はてっちゃんが高校生の時、彼女と二人でいるの、見たことあるんだ」
「…………」
は…?
梨央の胸に顔を埋めたまま、固まる。
今更そんな目撃情報いらねぇ…!
「なーんか仲良さそうでさ。思い出すと妬けちゃうなぁ」
顔を上げてみれば、唇を突き出して拗ね顔を作ってる。
「妬けちゃう」って言いながら、半分はふざけてるのがわかる。
「過去はどうにもならないけど。てっちゃんの今と未来は、私にちょうだいね」
言い聞かせるみたいに、慰めるみたいに、俺の瞳を覗いてくる。
クソ…余裕だよな。
この場面で大人の女見せつけてくるなんて。
全然カッコつかねぇよ。
そんなの、言われるまでもない。
「当たり前。全部梨央にやるし、梨央のも全部俺がもらう」
「うん」
こんな余裕のない俺、誰にも見せらんねぇ。
木兎なんかに知られたら、笑われるだろうな。
研磨やツッキーだったら、きっとバカにしてる。
でもな、仕方ねぇんだよ。
こんな風になっちまうのは、俺を翻弄する梨央のせい。
それから、そこに自らハマッちまった、自分のせいだ。
もう開き直る。
嫉妬して、何が悪い?