第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
「今でも充分制服似合うな。梨央、高校の頃モテただろ?」
「そんな…モテたことなんてないよ」
「それきっと、梨央が気づいてないだけ。ていうか、これから気をつけろよ?店に変な客とか来るかもしんねぇし」
「…うん」
確かに、お酒入って変な絡み方するお客さんはいる。
私は厨房に入ってることがほとんどだけど、バイトの女の子は、たまにちょっかい出されたりもしてるんだよね…。
「この歳でセーラー服脱がせるのって、何つーか、背徳感あるよなぁ」
しみじみ言いながらその手はスカートの中へ潜り、スリスリと脚を撫でていく。
「やっ、擽った…」
思わず腰が引けてしまう。
私の手を引いて、てっちゃんはベッドの端に腰掛けた。
さっきみたいに、目の前に立つ私を見上げてくる。
いつもとは、目線が逆転。
「梨央。もうちょいこっち」
てっちゃんはチョイチョイ、と自分の足の間を指差した。
言われたとおり、もう一歩近づく。
私の腰に長い腕が巻きついて、胸元に顔を埋められた。
「梨央…」
「ん?」
「あの…さ…」
「うん」
「……」
てっちゃんにしては珍しく、何だか言い淀んでいるみたい。
私が返事をしても、その先がなかなか続かない。
どうしたんだろう…?
何か言いたいの?
聞きたいの?
何か気になることがあるのなら、言って欲しい。
私は言葉の代わりに、てっちゃんの頭をそっと抱き込んだ。
ただ黙って、低い声が響くのを待つ。
「高校の頃…付き合ってた奴、いた?よな?」
ようやく問われた言葉は、私が予想しなかったもので…。
「…うん」
ただ短く、そう返した。
「そいつに制服脱がされたこと…ある?」
「……」
それは…。
高校生の頃に経験したことがあるかって……聞いてるの……?
「てっちゃ…」
「あー…違う。やっぱダメ。答えなくていい…。何か…あの頃の梨央が手に入んねぇの、すげぇ悔しいわ…」
……。
やだ…
てっちゃんって…
こんなこと、言うの…?
いつも余裕で、付け入る隙なんてなくて、思うまま私を翻弄するこの人が……?
どうしよう…
すっごく、嬉しい……。