第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
よそってもらったカレーとサラダを前に、手を合わせる。
仕事の日でも、できるだけ自炊は心掛けてる。
疲れて自炊が無理な時は、コンビニのお世話になったり。
だから仕事をした後ごはんが用意されてるって、すごくありがたい。
「いただきます」
「どうぞ」
カレーをスプーンで掬って、口の中へ。
「ん?甘口?」
「あ、わりぃ。苦手?俺甘口好きで」
「ううん、おいしい。甘口も好き」
「よかった」
「何か意外。てっちゃんも可愛いとこあるんだねー」
「だろ?」
そうなんだ。
食べ物の好みを知っとくのって、大事だよね。
これから手料理作ったりもするだろうし。
てっちゃんと食べる時は、カレーは甘口、と。
「他に好きな食べ物は?」
「魚。特にサンマ」
「そうなんだ。サンマは旬じゃないから……煮魚とか好き?」
「ああ、好き」
「じゃあ、今度作るね」
「いいな。家庭料理って感じでさ」
ひとり暮らししてるからかな?
外食で凝ったもの食べるより、素朴な料理を食べたくなる時ってあるよね。
てっちゃんもそうなのかも。
そんな中、ふと思う。
食べ物の好みもそうだけど…
「知らないこと、まだ沢山あるんだろうな…」
何の気なしに、そう口にした。
知り合ったのは中学の頃。
でも、その割に知らないことは多い。
交友関係だって、研くんと木兎くんたちくらいしか知らない。
もっと、知りたいな。
「これから知ってきゃいいじゃん?そのためのお付き合いだろ?」
ちょっとふざけた風に、てっちゃんはそう言って笑う。
「うん。そうだね」
その通りだと思う。
私たちの道は、交わったばかりなんだから。
「ねぇねぇ。こういう時のお約束だと思うんだけど」
「何?」
「後で卒アル見せてね?」
「いいよ。特に面白くもないと思うけど」
「私のもいつか見たじゃない。お互い様だよ」
高校の時のてっちゃん、どんなだっけ?
ちょっと楽しみ。