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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】




全身の力が抜け落ちてしまいそう。


離れていく唇の感触。
そっと目を開けてみる。

まだ、もう少し……欲しい……。

瞳だけでそう伝えてみる。
わかってくれたのか、てっちゃんも同じ気持ちでいてくれているのか。

再び重なった唇は、さっきよりも強く押し当てられた。
触れ合う場所を少しずつ変えて、でも熱を逃がすまいと距離は離さずに。
丁寧に丁寧に、唇で愛される。

「ん…っ」

思わず漏れてしまう声。
腰に手を回されて、距離がもっと近づいた。

次第に深くなるお互いの熱。
絡め合っているのにもっと欲しくなる。

耳につく濡れた音。
まとわりつく舌の心地よさ。
背中を這う手の感触のもどかしさ。
快感という名の痺れが、全身を駆け巡ってゆく。



これもう…キスっていうより……。
どうしよう……体がゾクゾクする。
てっちゃんのキス、すごく気持ちいい。
あ、さくらんぼの件……あれ、本当だったんだ。


車内に籠る甘い空気に酔いしれていると、ふいにその気持ちいい刺激は途切れた。

てっちゃんが、私の耳元に唇を寄せる。
そしてそこにもチュッと小さくキス。


「あ…っ…」


自制できなかった声が響く。
そこはちょっと…、ダメ……。


「弱いの?耳」


その声も話し方も、本当にダメ…。
何なの?この妙な色気。


「うん……」


やだ……上擦った声しか出てこない。
てっちゃんの唇はそこから離れてはくれなくて、舌先でツーッと耳の外側をなぞられて…

「やぁ…っ」

苛めるみたいにそこを何度も行き来させる。
思わず漏れた声が恥ずかしくて、私は必死に声を押し殺した。

「んん…っ」

「声、我慢すんな。誰にも聞かれねぇから」

そんなこと言わないで…。
ここで解放したら、欲しくなっちゃう。

「はぁ……っ。てっちゃん…が、きいて、る…」

吐息混じりの声で、何とか堪える。
てっちゃんの首にギュッと腕を回して、離れたくないことだけは伝わるように。


その時。
舌の感触が離れていったかと思えば、次に聞こえてきたのは大きなため息。
そして、絞り出すように囁かれた欲求。


「もう無理…。このまま連れて帰っていい?」



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