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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】




シンとした二人の間に、記憶を巻き戻すような懐かしいメロディーが流れている……はずだ。

おかしなことに、今の俺には届いていない。

代わりに、体に響くほどの鼓動の音。






おい…。


夜景はどうした…?


よりによって、コンビニの駐車場とか。




でも、俺から瞳を逸らさない梨央ちゃんを目の当たりにしたら、胸に秘めている想いは同じな気がした。
助手席のシートに手を着き、空間を埋めていく。


なぁ…今、何を思ってる?


目を逸らさないし、その手で突き放しもしない。


俺が何をしようとしてるのか、わかるよな?


もう、止められねぇよ……。





ゆっくり顔を寄せる。
梨央ちゃんは少しだけ瞼を伏せて、睫毛を震わせた。
ヤバイくらい心臓が早鐘を打ってる。
吐息が触れ合うくらい、その距離は限りなくゼロに近づいて。

触れてしまう、その間際。

梨央ちゃんはふいに、窓側へと顔を逸らした。


「…………」


俺の思考は止まる。
籠った熱がスーッと引いていく。

「ごめん」と言うべきか……その判断に迷うほんの数秒の間を置いて、か細い声が聞こえてきた。




「ダメ、だよ……。汐里ちゃんがいるのに……」



「……」




……汐里?



今……汐里って、言ったか…?



「何で……汐里?」


「だって……付き合ってるでしょう?」


付き合ってるって、俺と汐里が?


「……付き合ってねぇけど…」


「……え?」


何故かビックリした顔をして、こっちを見てる。


「何でそうなんの?」


「だって…浴衣一緒に選んでるの見ちゃって…。バレー見に行った時もすごく仲良さそうだったし…」


浴衣…?ああ…あの時か……。


「あんな可愛い子に好かれたら、てっちゃんだってその気になっちゃうでしょ……?」


ちょっと…待て。
汐里が、俺に気があるって言いてぇのか?


マズイな……。
マズイ、マズイ。非常にマズイ。

勝手にこんなこと言うのは気が引ける。

けど、俺を助けると思って……

許してくれ、汐里!



「それは本っ当にねぇよ。だって汐里が好きなのは、赤葦だから」



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