第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
梨央ちゃんは色んな顔を持っている。
今みたいに、俺とじゃれ合ってくれるところ。
ポッキーかじゃがりこかで迷うような、子どもっぽいところ。
時々覗かせる、女の色気。
明るい性格だけど、その分内に入って辛いことをギリギリまで我慢しちまうところ。
一度泣いたら、なかなか涙を止められないところ。
そんな梨央ちゃんの全部が、俺は好きだ。
俺にとって梨央ちゃんはもう、"年上のお姉さん" なんかじゃない。
俺が守ってやりたい。
俺のそばにいて欲しい。
他の男になんか、触れさせたくない。
会えない時は声が聞きたくなって、会えば抱き締めたくて堪らない。
可愛くて、愛しくて、目が離せない。
俺が恋した、一人の女―――。