第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
それからみんなは予約時間いっぱいまでバレーを楽しんで、店へとなだれ込んだ。
「大したもん作れないけど、酒はあるから。みんな飲んでってねー!」
「すんません、南さん。定休日なのに」
「いーのいーの!」
南さんはとことんノリが軽い。
手分けしてお酒やグラスを運んでくれてる間、私は南さんのお手伝いで少しだけおつまみを作る。
仕事の後に運動じゃ、相当お腹空いてたんだろうな。
料理はあっという間になくなって、お酒もすすんで、みんないい具合に酔いが回ってきたみたい。
木兎くんとリエーフくんと南さんはテンション高いし。
研くんは隅っこでゲーム始めてるし。
てっちゃん、ツッキー、赤葦くんは、マイペースに飲み進めている。
空いたグラスやお皿がテーブルを占領し始めたため、私は席を立った。
取り合えず乗せられる分だけトレイにお皿を乗せて、洗い場へ運ぶ。
持ちきれなかったグラスを取りに行くため厨房を出れば、汐里ちゃんが丁度それを持ってきてくれたところだった。
「ありがとね、汐里ちゃん」
「いえ。あの、厨房入って良ければ私洗いますけど…」
「いいよいいよ!悪いんだけど、南さんの相手してあげてくれる?汐里ちゃんがいると嬉しそうだし」
「あ、はい。すみません」
ペコリと頭を下げて、汐里ちゃんはまたみんなのテーブルへと戻って行った。
可愛いし、素直だし、気も利くし……。
汐里ちゃんがいい子だってわかるほど、自分が惨めになっていく。